「ヨミくんはぁ、マロウティー
僕も同じのでぇ~」
吹き抜けの アクアリウム
人口滝に、
瓦のファサードが
異国情緒ある空間。
「オーナー。一応、オーダーを
私に聞いて頂いても、
よろしい のですのよ。」
席で、
ハジメオーナーの勝手な
メニュー決めに
否を投じます。
「えぇ、いつもマロウ
ティーでしょ~。あ?スイーツ
頼むぅ?スタンドのやつ?」
「いえ、けっこうです。
オーナーの言うとおり、
マロウ 一択で。」
「なんだよぉ。ならいいじゃん」
BGMは 取り巻く
結界水路のせせらぎと、
ピアノの ゆらぎ。
「そういえば、オーナー。
先ほどの 頂上のお部屋って、
確か 昔は 開いてませんでした
よね?
倉庫にしてたとか聞きますが」
カップに、
真っ青な色の茶と、
檸檬の輪切りが
添えられ
私達の前に 並べられます。
「そう言われるけどぉ。どうかな
美術品の倉庫にさぁ、黒柿の
床柱なんて、設えないよぉ。」
ハジメオーナーは、
檸檬の輪切りを
真っ青なカップの海に
入れます。
「でも 確かに、私がいた時、
あの部屋は、開かずの間でした」
私も、真っ青のお茶に
檸檬の輪切りを
浮かべ。
「ヨミくんは分かると思うよぉ?
あの階段を 登りきってもぉ、
実は地面でしょ?」
カップの青は、
手品か、ローズカラー。
その鮮やかな
変身に 微笑みます。
「ええ、階段は、坂の傾斜を
利用してますから、
1番上に、登っても、そこは
坂の上。地面ですわ。それが?」
タレ目の彼が
唇をニッと
上げましたわ。
「階段を99段までしかぁ、
上がれない者は~、そのまま
下界へ降ろされるけどぉ。
中には 100段目を上がる人間が
いたのだよん。わかるぅ~?」
確かに、99段、突き当たりは、
外の坂。出口。
100段となると
頂上の間に上がれば?
「さてぇ、その下の部屋って~
もちろん
ヨミくんは覚えてる?」
簡単。
カップをスプーンで
混ぜれば
より赤く水色が 変わり。
「茶室風の部屋ですね。書院風
茶室といった感じですよ。
入り口の障子には、富士細工が
設えて、、もしかして?黒柿、」
顎に手を当て
考えます。
「ご名答~。僕はねぇ、その下の
部屋はぁ、京の離宮。茶室はぁ、
京の書院。そしてぇ
頂上はぁ 大和の倉を 意してると
思うんだよねん。全部~黒柿。」
?!。
「さすが、ギャラリスト探偵の
異名を持たれるオーナーですね」
「僕がぁ探偵ならぁ、ヨミくんは
相棒だねん~。あはは~。」
そう、
有名な探偵の
居場所を、屋号にしてますし。
メタモルフォーゼの お茶は、
檸檬の酸っぱさが
口に広がり。
「大和の倉なら、天皇、
現人神の 管轄ですわね、」
私は 息をつきます。
「富士山の さらに上は、
仙人の住みか だからねん。
黒柿は150年齢、仙人で
ないと拝めない~。」
あら、貴公子の顔で
返され。
「なるほど、仙人のいる場も、
かの倉の中も、人類の宝物が
あります わね。」
「100わねぇ、『王』の数字。
それに、本来の依頼画家が、
亡くなってより、
浄土になったのかもね」
ハジメオーナーは、
そうして
私を 磔るのです。
「ヨミくんはぁ、金比羅の
奥書院 行った事あるよねぇ?」
ええ、天空に届きそうな
階段を登りつめた先にある
浄土の花園の院。
「ええ、花書院と
向こうの空に浮かぶ讃岐富士が
、素敵な?!寄せてですか、、」
この才能は 何を
私に見せるつもり!
「天空の讃岐富士と、茶室、
地の清方富士。芸術家なんてさ
伏線被せる 意図なんてぇ、
どこで でもするよん。
金比羅は船乗りの聖地~」
はい、妄想として おきます。
「ひどいなぁ。強ちだよん?
罪人は神を目指し落とされた。
名実共にぃ、錬金する部屋さ。」
銀行から数千億もの資金を
絞りとり 闇に消した
戦後最大の
経済事件ね。
あれがなければ
『失った10年』は起きなかった
とも仮説されるけど。
因果な舞台の波紋。
そんな 扉の前で 私達は
出逢ったのですか?。
続けて
私は 口にするのです。
「だから、、、ですか。」
彼が あの部屋で
懐かしそうに
寝転がる
先ほどの姿が
蘇って。
「昔からぁ、別館に良く似た?
それ以上の美しく薫りがする~
ってさぁ、お気に入りだったよ
。扉前ってさぁ。」
美術品の洪水のような
貴公子の別館の
移り香を、的確に
彼は
掴んでいたのですね。
「『ナサケ』天職ですわね。」
音にして
しまったと 思って
見ると、
タレた目が
ハの字になってます。
「昔の話だよぉ。」
あの部屋は、
『パンドラの扉』
「まるで、予定調和ですわね。
後輩ちゃんも、
パンドラを 開けたとか。」
ここも『パンドラ』でしょ。
マロウティーを
飲み干し
視線をやります。
「へぇ、そこには、何が入って
たのかなぁ~?『希望』?」
弓なりの口をして、
ハジメオーナーが 呑気に笑うので
「錬金術の跡が。」
と言ってやります。
「それは、、因果だね」
オーナーに、私は
押し黙り 首を縦に 振る
のみ。
「せっかくだしぃ、胎内めぐり
しておくかな~、ここは
そう~ 邪気祓いしよう~!」
オーナー、逃避しましたね。
己が宿命を 自覚ですよ。
諦めましょう。
貴方は、
時代の波に
足を囚われる 質なのだとね。
もしも、彼のパンドラは
どこかと聞かれれば、
それは
あの日
なのではないかと、
会計を終わらせ 庭に出る
彼を 見つめて
思うのです。
私は、
貴公子の家族を
お母上以外
見た事がありません。
滝の裏
洞窟に 入ると、
薄暗い中に、
ゆらぐ
滝の音が木霊し、
彼の 見慣れた背中から
私は 過去に
戻るのです。
『ヨミさん、おぼちゃまの部屋を お掃除お願いします。』
ゲストリレーションからの
指示で
あの日
ノックし、入った 洋館。
貴公子の 部屋は
大惨事の跡
荒れ狂って
部屋中が、服が、調度品が、
粉々にトグロを巻いて。
死んだ目の
貴公子が
『引き払う。セットアップ
出来たら、
すぐ チェックアウトするよ。』
淡々と 放つので
『洋館の幽霊達が出ましたか?』
としか、
返せなかった。
噂のゴースト達が
ポルターガイストでも
起こしたのだと 思うほどの
部屋。
でも、
シャワーする
貴公子の 着替えを
散乱群から
見つけ出す中、
貴公子が
肉親を亡くし
世界で 1人になった
事実を見つけて
しまい。
部屋中の
荒れ狂う悲しみがある
今の部屋は
貴公子のパンドラだと。
涙が
流れました。
滝の裏側に
たどり着くと、
彼は、
手を組んで祈ります。
高僧に恋せし 乙女が
会いたさに
火付けの罪を犯し処された
伝えある場。
僧は、乙女の為に
祈り
その光明が柱となり
時折、滝に現れると
崇められいます。
「やっぱり落ち着く~。
胎内で聞く音に
近い音なんでしょ? 」
彼、もと貴公子で、
ギャラリスト探偵とも呼ばれる
オーナーには、
光明の柱が
見えると いいですね。
人が神を乞うように、
乙女が高僧を恋うように、
今も
何処か寂しい彼は
まだ
孤独から
抜け出せてないから。
「熱心に 祈らたのは、家庭的な
女性との出逢いですか?」
皮肉だと
解っていて、
どうして
こんな台詞を
形に
するのでしょう。
「う~ん。どうかなぁ。それより
これから 会いにく、船長を
鮮やかに口説けるようにってね」
ハジメオーナーは、
肩をそびやかします。
「あら、今度は 戦艦でも
動かされ、逃亡しますか?」
私は、
眼鏡のツルを 指で押し上げ
ます。
「そう~。お江戸恐ろし、
我らは 急げ退散だよん。ここは
昔の知り合いがぁ多過ぎ~。」
今度は、
波の上だよん。
と、ケタケタと
笑って、ホテルの玄関に
歩き出す
その頭に
青い紅葉が
左右に
揺れながら
落ちて、
私はそれを
手にします。
「いつも 有り難うねぇ~」
「私しか、おりませんしね。」
参りましょう。
彼が描く 波の形を
また 私が
辿る 旅へ。
終
『首都のホテルに住まう貴公子
~ギャラリストに成る前の彼と
私の話』
2020年8月15日~18日脱稿。
さいけ みか
僕も同じのでぇ~」
吹き抜けの アクアリウム
人口滝に、
瓦のファサードが
異国情緒ある空間。
「オーナー。一応、オーダーを
私に聞いて頂いても、
よろしい のですのよ。」
席で、
ハジメオーナーの勝手な
メニュー決めに
否を投じます。
「えぇ、いつもマロウ
ティーでしょ~。あ?スイーツ
頼むぅ?スタンドのやつ?」
「いえ、けっこうです。
オーナーの言うとおり、
マロウ 一択で。」
「なんだよぉ。ならいいじゃん」
BGMは 取り巻く
結界水路のせせらぎと、
ピアノの ゆらぎ。
「そういえば、オーナー。
先ほどの 頂上のお部屋って、
確か 昔は 開いてませんでした
よね?
倉庫にしてたとか聞きますが」
カップに、
真っ青な色の茶と、
檸檬の輪切りが
添えられ
私達の前に 並べられます。
「そう言われるけどぉ。どうかな
美術品の倉庫にさぁ、黒柿の
床柱なんて、設えないよぉ。」
ハジメオーナーは、
檸檬の輪切りを
真っ青なカップの海に
入れます。
「でも 確かに、私がいた時、
あの部屋は、開かずの間でした」
私も、真っ青のお茶に
檸檬の輪切りを
浮かべ。
「ヨミくんは分かると思うよぉ?
あの階段を 登りきってもぉ、
実は地面でしょ?」
カップの青は、
手品か、ローズカラー。
その鮮やかな
変身に 微笑みます。
「ええ、階段は、坂の傾斜を
利用してますから、
1番上に、登っても、そこは
坂の上。地面ですわ。それが?」
タレ目の彼が
唇をニッと
上げましたわ。
「階段を99段までしかぁ、
上がれない者は~、そのまま
下界へ降ろされるけどぉ。
中には 100段目を上がる人間が
いたのだよん。わかるぅ~?」
確かに、99段、突き当たりは、
外の坂。出口。
100段となると
頂上の間に上がれば?
「さてぇ、その下の部屋って~
もちろん
ヨミくんは覚えてる?」
簡単。
カップをスプーンで
混ぜれば
より赤く水色が 変わり。
「茶室風の部屋ですね。書院風
茶室といった感じですよ。
入り口の障子には、富士細工が
設えて、、もしかして?黒柿、」
顎に手を当て
考えます。
「ご名答~。僕はねぇ、その下の
部屋はぁ、京の離宮。茶室はぁ、
京の書院。そしてぇ
頂上はぁ 大和の倉を 意してると
思うんだよねん。全部~黒柿。」
?!。
「さすが、ギャラリスト探偵の
異名を持たれるオーナーですね」
「僕がぁ探偵ならぁ、ヨミくんは
相棒だねん~。あはは~。」
そう、
有名な探偵の
居場所を、屋号にしてますし。
メタモルフォーゼの お茶は、
檸檬の酸っぱさが
口に広がり。
「大和の倉なら、天皇、
現人神の 管轄ですわね、」
私は 息をつきます。
「富士山の さらに上は、
仙人の住みか だからねん。
黒柿は150年齢、仙人で
ないと拝めない~。」
あら、貴公子の顔で
返され。
「なるほど、仙人のいる場も、
かの倉の中も、人類の宝物が
あります わね。」
「100わねぇ、『王』の数字。
それに、本来の依頼画家が、
亡くなってより、
浄土になったのかもね」
ハジメオーナーは、
そうして
私を 磔るのです。
「ヨミくんはぁ、金比羅の
奥書院 行った事あるよねぇ?」
ええ、天空に届きそうな
階段を登りつめた先にある
浄土の花園の院。
「ええ、花書院と
向こうの空に浮かぶ讃岐富士が
、素敵な?!寄せてですか、、」
この才能は 何を
私に見せるつもり!
「天空の讃岐富士と、茶室、
地の清方富士。芸術家なんてさ
伏線被せる 意図なんてぇ、
どこで でもするよん。
金比羅は船乗りの聖地~」
はい、妄想として おきます。
「ひどいなぁ。強ちだよん?
罪人は神を目指し落とされた。
名実共にぃ、錬金する部屋さ。」
銀行から数千億もの資金を
絞りとり 闇に消した
戦後最大の
経済事件ね。
あれがなければ
『失った10年』は起きなかった
とも仮説されるけど。
因果な舞台の波紋。
そんな 扉の前で 私達は
出逢ったのですか?。
続けて
私は 口にするのです。
「だから、、、ですか。」
彼が あの部屋で
懐かしそうに
寝転がる
先ほどの姿が
蘇って。
「昔からぁ、別館に良く似た?
それ以上の美しく薫りがする~
ってさぁ、お気に入りだったよ
。扉前ってさぁ。」
美術品の洪水のような
貴公子の別館の
移り香を、的確に
彼は
掴んでいたのですね。
「『ナサケ』天職ですわね。」
音にして
しまったと 思って
見ると、
タレた目が
ハの字になってます。
「昔の話だよぉ。」
あの部屋は、
『パンドラの扉』
「まるで、予定調和ですわね。
後輩ちゃんも、
パンドラを 開けたとか。」
ここも『パンドラ』でしょ。
マロウティーを
飲み干し
視線をやります。
「へぇ、そこには、何が入って
たのかなぁ~?『希望』?」
弓なりの口をして、
ハジメオーナーが 呑気に笑うので
「錬金術の跡が。」
と言ってやります。
「それは、、因果だね」
オーナーに、私は
押し黙り 首を縦に 振る
のみ。
「せっかくだしぃ、胎内めぐり
しておくかな~、ここは
そう~ 邪気祓いしよう~!」
オーナー、逃避しましたね。
己が宿命を 自覚ですよ。
諦めましょう。
貴方は、
時代の波に
足を囚われる 質なのだとね。
もしも、彼のパンドラは
どこかと聞かれれば、
それは
あの日
なのではないかと、
会計を終わらせ 庭に出る
彼を 見つめて
思うのです。
私は、
貴公子の家族を
お母上以外
見た事がありません。
滝の裏
洞窟に 入ると、
薄暗い中に、
ゆらぐ
滝の音が木霊し、
彼の 見慣れた背中から
私は 過去に
戻るのです。
『ヨミさん、おぼちゃまの部屋を お掃除お願いします。』
ゲストリレーションからの
指示で
あの日
ノックし、入った 洋館。
貴公子の 部屋は
大惨事の跡
荒れ狂って
部屋中が、服が、調度品が、
粉々にトグロを巻いて。
死んだ目の
貴公子が
『引き払う。セットアップ
出来たら、
すぐ チェックアウトするよ。』
淡々と 放つので
『洋館の幽霊達が出ましたか?』
としか、
返せなかった。
噂のゴースト達が
ポルターガイストでも
起こしたのだと 思うほどの
部屋。
でも、
シャワーする
貴公子の 着替えを
散乱群から
見つけ出す中、
貴公子が
肉親を亡くし
世界で 1人になった
事実を見つけて
しまい。
部屋中の
荒れ狂う悲しみがある
今の部屋は
貴公子のパンドラだと。
涙が
流れました。
滝の裏側に
たどり着くと、
彼は、
手を組んで祈ります。
高僧に恋せし 乙女が
会いたさに
火付けの罪を犯し処された
伝えある場。
僧は、乙女の為に
祈り
その光明が柱となり
時折、滝に現れると
崇められいます。
「やっぱり落ち着く~。
胎内で聞く音に
近い音なんでしょ? 」
彼、もと貴公子で、
ギャラリスト探偵とも呼ばれる
オーナーには、
光明の柱が
見えると いいですね。
人が神を乞うように、
乙女が高僧を恋うように、
今も
何処か寂しい彼は
まだ
孤独から
抜け出せてないから。
「熱心に 祈らたのは、家庭的な
女性との出逢いですか?」
皮肉だと
解っていて、
どうして
こんな台詞を
形に
するのでしょう。
「う~ん。どうかなぁ。それより
これから 会いにく、船長を
鮮やかに口説けるようにってね」
ハジメオーナーは、
肩をそびやかします。
「あら、今度は 戦艦でも
動かされ、逃亡しますか?」
私は、
眼鏡のツルを 指で押し上げ
ます。
「そう~。お江戸恐ろし、
我らは 急げ退散だよん。ここは
昔の知り合いがぁ多過ぎ~。」
今度は、
波の上だよん。
と、ケタケタと
笑って、ホテルの玄関に
歩き出す
その頭に
青い紅葉が
左右に
揺れながら
落ちて、
私はそれを
手にします。
「いつも 有り難うねぇ~」
「私しか、おりませんしね。」
参りましょう。
彼が描く 波の形を
また 私が
辿る 旅へ。
終
『首都のホテルに住まう貴公子
~ギャラリストに成る前の彼と
私の話』
2020年8月15日~18日脱稿。
さいけ みか