杏奈が顔を赤らめると、それを見て広人も心なしか頬がピンクに染まる。
広人は一度目を伏せて、改めて杏奈の目を見て言った。

「僕は杏奈さんが好きです。結婚を前提にお付き合いしていただけないでしょうか?」

その言葉は杏奈がずっとほしかった言葉で、嬉しさと恥ずかしさで全身から湯気が出そうなくらい高揚した。
今まで悩んでいたのは何だったのか、一瞬で吹き飛んでしまうほどの衝撃だ。

「もうっ、そういう大事なことは先に言ってください!二回もお見合いだなんてっ!もし私が来なかったらどうしてたんですか!」

嬉しいのに素直に“はい”と言えない杏奈は、勢いに任せてプリプリ怒る。
それに対して広人は笑いながらも真面目に謝る。

「ははっ。すみません。」

「ぷっ。あはは。ほんと広人さんって真面目。こちらこそよろしくお願いします。」

何だかとてもすっきりとした気分で、杏奈は改めて返事をする。

とても優しい空気に包まれて、二人はにこりと微笑んだ。

と、同時に。

「こほん、じゃあ私たちはおいとまするわね。」

「はっ!お母さん!」

母親たちが同席しているのをすっかり忘れていた杏奈は、あまりの羞恥に両手で頬を覆った。

「不器用ですみませんねぇ。」

「いえいえ、こちらこそ。」

呆れた笑いを含みながら母親たちは席を立ち部屋を出ていった。