そんな時はやはり愚痴るに限る。

仕事終わりの愛美と待ち合わせをして、久しぶりに繁華街まで出掛けておしゃれな創作料理店で女子会だ。
仕事の愚痴をと思っていたのに、愛美が聞きたいのはそれではない。
とりあえずビールで乾杯をして、さっそく愛美が切り出した。
もちろん話題は杏奈のお見合いのことだ。

「でさ、ほんとに断ったの?」

「断ったわ。」

「えー、もったいない。」

杏奈の言葉に愛美は大げさに驚く。
杏奈はため息ひとつ、じとりと愛美を見て言う。

「なんであなたまでそう言うわけ?」

「だってそんな優しい人、もう出会えないかもよ?」

「この前はヘタレとか言ってたくせに。」

「だからー、ヘタレと優しさは紙一重だって言ったでしょ。」

運ばれてきた枝豆を杏奈に勧めつつ、愛美は持論を展開する。

「もう、ほんと意味不明なんですけど。はー、雄大みたいな人いないかなー。」

ビールを煽りながら杏奈はぼやく。
元彼である“雄大”という名前を久しぶりに発した気がした。
何だか懐かしい気分になる。

「おっ?未練かい?」

「違うわよ。何かこう、私のモチベーションあげてくれる人がいい。」

「また難しいことを。」

目標でありライバルであり、でもいざというときちゃんと助けてくれる。
雄大はそんな男性だった。
雄大に未練はない。
だけど今でもそんな男性が杏奈の理想だ。

二人はビールをおかわりし、運ばれてきた料理にも手を付け始める。
久しぶりの女子会は楽しくて、料理もお酒も美味しいし、つい調子に乗って飲み過ぎた。