「……わかんない。でも、したかったら、たぶん自然に始めてると思うんだ。だから、今はなにも考えてない」
ヨウイチはわからなくても以前のように思いつめた表情ではないことに、どこか安心した。
「そうか。まあ、あれだな。やりたいことを見つけるより先に、感謝がないとな。感謝してると、色んなことに繋がっていくものだし。想像もしない未来というのは、そうやって創り出されていくものだと最近、俺も感じてるよ」と言って、持っていた缶ビールを飲みほした。

格好つけてるなぁと笑ってから、ハナはようやくその銘柄がノンアルコールじゃないことに気がつき
「あれ? お父さん、それノンアルじゃないよ」
「ん?」
「………」
「あっ! しまった。つい!」
ヨウイチは帰りは車で送るつもりでノンアルコールを飲んでいたのけど、何本かあけた後、間違えてビールを飲んでしまっていた。

結局、その日の帰りはアサミに迎えに来てもらうことになった。
自転車で帰れない距離ではないのだけど、街灯がないし、この前の夜のヤシガニでさえ恐かったから、慣れるまでは素直に甘えることにした。

「ごめんね。アサミちゃん」とヨウイチが面目なさそうにする。
「大丈夫、大丈夫」
ヨウイチが自転車を車に乗せると、すぐに発進した。