思えば、ハナと初めて会った日、どうしてか泣いていた。
次に会えば明るい笑顔を見せていて、そう思えば急に突っかかれたこともあったり、また泣き晴らしたような瞳の日もあった。

今日は、自分の作業しているところを喜びいっぱいといった表情で見守るから、不思議だった。
ハナのことなど、全然なにも知らないと思う。
だけど表情豊かな様子を見ていると、一緒にいて面白くもある。
それにどうしてか、ハナの島ぞうりを彫っていたとき、自分の中に熱いものを感じた。
(家に帰ったら、続き彫るかな)
自然とそんな風に思うような、温かさだった。

民宿の明かりが近づくと、笑い声が漏れていた。
ハナはほっとすると、ちょっとした言いあいや恐いと感じていたことがくだらなくて笑えてきた。
代わりにキラキラとした感謝を感じて
「カイリ」
「ん?」
「迎えに来てくれて、ありがとう」
「別に」
素っ気なく答えたのだけど、ハナの素直さを感じてなんだか照れくさかった。

門の前でナギサとミナトがハナ達の帰りを待ちながら、遊んでいる。
戻って来た二人に気がついて「あ、帰って来たど」とミナトが言うと、門からハルカが顔を出した。
「あ、ハナちゃん、お帰り!」

自分のお家ではないし家族でもない。目を丸くしたけど、自然とそう言われて嬉しかった。
「ただいま」とハナは笑って言った。