だけど相手がカイリであっても、それはちょっと恥ずかしかった。
ためらっていると
「裾掴まれるより、いいから」
「でも」
「ミナトも恐いとき、手を繋ぐと落ち着くから。子供ってそういうものだろ」
「子供? 私、タメなんだけど」
「子供だろ。こんなことでビビるなんて」
「………」
冷静に小馬鹿にされたので「恐くない、恐くない。ちーっとも恐くないよ」と強がってずんずん進んだ。
虚勢を張ってるのが伝わってきて、カイリは
「大丈夫だよ。ヤシガニ、食べたらうまいだけだし」
「え、ヤシガニ食べれるの?」
「うん。食べ物が隠れてると思ったら、恐くないだろ」
そう言うので、ぷっと噴き出した。暗闇と音が恐かったのだけど、緊張感のないカイリの会話に気が緩んだ。

「ヤシガニ食べてみたい。捕まえるの難しいの?」
「俺は捕まえたことないけど。今度じぃさんに教えてもらえば。たまに捕まえてくるし」
「そうなの? おじぃすごいね! うん、今度教えてもらおう。さばくの難しいのかな? 甲羅って硬いの?」
さっきまで恐がっていたのに、一瞬で意気揚々とするので「本当に、子供みたいだな」とカイリは苦笑した。