「ぎゃあっ」とまた驚くのだけど、カイリはなにひとつ表情を変えない。
「この音なに? なにがいるの? ハブ?」
「たぶんヤシガニだよ。この島ハブいないみたいだし」
「え、沖縄ってハブどこにでもいるんじゃないの? ヤシガニってなに?」
「ハブは島によるみたいだけど……ヤシガニ? んーっ、でっかいザリガニみたいなの? 爪のでかい」
カイリは小首を傾げながら答えた。
「ああ」
なんとなくイメージが湧いて頷いたけど、夜に遭遇したらちょっと恐い。
「ていうか、服、伸びるんだけど」
さっき叫んだときに掴んだカイリのTシャツの裾を引っ張ったままだった。
「ごめん!」
「そんなに恐いなら、ほら」
手を差し伸べるので、思わず見上げた。手を繋ごうという意味なのだろうけど、男の子と手を繋ぐなんて中学生になってから、したことがない。
そういうこと自然にできるなんてちょっと大人だなぁと、彼女がいたという話を聞いていたせいか、感心する。
少し男の子にも感じて、ドキッとした。