フクギの木のトンネルを抜けてすぐ右手に小道があり、ビーチに繋がっていた。

「岩場の近くに置いたって言ってたっけ」
砂浜を踏みしめ、男の子が置いた袋を探す。
あまり広いビーチでなくて良かった。少しすると、岩場の陰にビニール袋を見つけた。
貝や水色や緑のシーグラスが沢山入っている。
「綺麗」
男の子が遊んでいる様子が思い浮かんだ。
楽しかったんだろうな。なんとなく伝わるものがあった。

私だって、ここに来てから楽しい思い出が沢山出来た。
なんとなく自分と重なって、袋を大切に抱えた。

夕陽が傾きかけてきて、海がオレンジ色に染まる。
「うわぁ、綺麗」
なんだかここに来てから、太陽が大きく感じる。奥の方に、島のようなものが見えた。
あそこにも誰か住んでいるんだなと、海の先にひとの営みを感じることがなんだか不思議だった。

美しいのに少し切なくなったのは、自分はもう両親と三人で家族旅行に行くことはないだろうな。
そんな気がしたからだ。
(家族が仲良しでいられるっていいな)
自分には、もう永遠に手に入らないもののような気がして、寂しくなった。