ソウメイがこの島に来たのは、何か事情があるのではないかと思ってもいたからだ。
兄とは連絡をとっているようだけど、彼の実家にソウメイの居場所を訊ねたとき、知らないと言われていたのが引っ掛かっていた。
でも寂しくないのなら、大丈夫だろうと胸がすいた。

「なら、良かった。先生もお父さんとお母さんと何かあったのかなって思っちゃったから」
安心したように笑う。
ソウメイは、ハナがどこかで自分の境遇と重ねて見ているのだと察した。
この島に来たのは、台湾で出会ったひとからこの島を教えてもらったことがきっかっけだった。それから買い手を探している家があることを知って、その流れで住みつくことになった。
実家と距離を置きたい理由はひとつあったのだけど、ハナのように重いものではない。

「……そうだね。ちょっと訳あって雲隠れをしてるところもあるかな。でも、大丈夫。家族と喧嘩をしてるわけでもないし、兄さん経由で元気に暮らしていることは伝わってるだろうから」
「本当に?」
「うん。もう少ししたら、僕から連絡してみようかな」
「そうしたほうがいいよ。きっと心配してるよ」
「そうだね」
「じゃあ、先生、また来るね!」と元気よく立ち上がった。