「でーど?(本当に?)東京から来たのに、芸能人、興味ないば?」とリナが驚くと、トイレから戻って来たナギサが「あ、リナ」と呼んだ。
さっきまでの威勢がなくなって、急に委縮する。
「はっ。ナ……ナギサにーにーも来てたば?」
「うん。なんか久しぶりだね」
「ナギサにーにーが、食べに来ないからよ」とそっぽを向いたけど、どこか照れ臭そうな顔をしているように見える。
これはもしかして。

(ナギサくんのことが好きなのかな?)
初対面のハナでもわかるくらい、意識して見えた。ナギサがいる手前、口に出せないけれど。
リナがおばさんに呼ばれて向こうに行くと、ナギサは「いつも、リナのこと怒らせちゃうんだよね」と、彼女の気持ちには全く気づいていないようだった。

ちょっと微笑ましくて、笑えた。
好きなひとか――そこでソウメイの顔が思い浮かんで、動揺する。
(先生は好きだけど、そういうんじゃない)
だけど、小、中学生と振り返ってみると、男の子にときめきを感じるということがあまりなかった。