「……目? ああ。そうだね。ハルカは目からの日焼け気にしてるから。僕は前も言ったけど、肌弱いからあまり焼けないけど、サングラスはしなくてもいいかなってかけてないだけだよ」
「カイリも日除けなの?」
「カイリ? ああ、前髪? あれはね、わかんない。小学生くらいから長かったから、あれが落ち着くんじゃないのかな」
「みんな綺麗な瞳してるのに、隠すなんてもったいないな」

ハナの言うことに深い意味はなかった。 
ナギサが少しドキッとしたのは、ひとに悟られたくないと感じることに心当たりがあったからだ。
彼自身、二人が瞳を隠しているのかどうか知らない。だけど自分の思っている通りだとしたら、それは少し寂しい。

ふっと笑って
「そうだね。言ってあげてよ。ハナちゃんが言ったら、ハルカあたりは喜んでサングラス外すかもしれないね」
冗談を言っているのに、どこか寂しげに見えてハナは胸がギュッとした。
だけど、なんとなくそれ以上は聞けなかった。
(知らないこと、沢山あるんだろうな)
そう思いながら、ペダルを強く踏み込んだ。

東集落は、石垣に囲まれた昔ながらの赤瓦の屋根の建物が多く目立った。
郵便局を曲がると、しなびた食堂が見えた。
自転車をとめて、看板を見ると『まぁさん堂』と書かれている。

外の席もあったのだけど、暑いからとお店の中で食べることにした。
フロアには数名のお客さんが座っていた。
小太りなおばさんが「あら、いらっしゃい」とハルカたちに、威勢よく挨拶をした。