背中が粟立つと、カイリは咄嗟に「触んな」と腕でハナの手を払っていた。
「ごめん。前髪、暑そうだったから、とめたらどうかなと思ったんだ」
ハナが謝ると
「……悪い。前髪、慣れてるから平気」 とカイリも素っ気なく答えた。
互いに悪気があったわけでもない。だけど手を払った瞬間、カイリの強い怒りが伝わってきて、してはいけなかったのだと気づく。ハナはなんとなく黙ってしまった。
「ハナちゃん、来てたの?」とカイリの後ろからハルカが顔を出した。
準備するねと言うと、ナギサを連れて戻ってきた。
自転車で食堂に向かいながら、ハナはモヤモヤした気持ちが収まらなかった。
ゆっくり漕いでいると、三人が遠くなっていく。ナギサがスピードを落として、ハナの隣に並んだ。
「大丈夫? 今日も暑いよね」
「うん。でも大丈夫。風があるから、気持ちいいよ」
「そっか。もう少しで着くからね」
「うん。ありがとう……ナギサくんは、二人と違って隠さないんだね」
「え?」
「目」