カイリは島ぞうりの角度を変えながらカッターで何度か切り込みを入れると、ピンセットでその部分を手際よく取る。あっという間にピンク色の星がひとつ出来上がった。
「すごいなぁ」
素直に感心する。しゃがんで作業を見てると、職人のように感じた。ずっと見ていられるなぁと、眺める。力強く繊細な所作は見ていて心地よかった。

「カイリ、かっこいいね」
「はっ?」と今度は驚いて顔を上げた。
「だから、かっこいいねって」

急にそんなことを言うものだから、ドギマギとした。女子と話さないというわけでもないけど、ぶっきら棒なところがあるせいか、かっこいいと言われたりすることは少なかった。

だけどハナの表情は恋する女の子というよりも、アニメのキャラクターを彫ってあげたときのミナトのようだった。キラキラと喜びが溢れている。
少しドキッとしてしまった自分に呆れて、また作業に取り掛かった。

それにしても、今日も暑い。
ハナはカイリの長い前髪が鬱陶しそうに見えて、気になった。
ポケットに入れていたヘアピンを探る。作業の間だけ、とめたらどうだろう。
「カイリ、10秒、じっとしてて」
「はっ?」と言いながらも、素直に手を止めるので、前髪に触れた。