ハナが俯くと、ソウメイはハナがお守りといっていた石のネックレスをしていないことに気づいて、不思議に思った。
「お守りは?」
ぶんぶんと首を横に振ってから
「失くしちゃって」
「そうか」 と、なにかを察したように呟いた。
彼は、ハナがその石を肌身離さず大事につけていたことを覚えていた。それがどれだけハナを支えていたものかということも知っていた。
失くしてしまったことを負い目に感じてしまったのなら、ハナの本来の心を濁らせていくきっかけになるには充分のような気がした。
きっと、それを失くした頃、書道や家族のことがうまくいかなくなったんだろう。どうにかしようと、頑張ってしまったんだろう。
頑張るというのは本来のひとのエネルギーとは真逆のものであることもわかっていた。
ただ心を濁らすことを加速させるだけに過ぎない。
本来の心が濁ってしまったら、自分のことがわからなくなって、当然だと思った。
そしてそんな状態で学ぼうとすることは、勝手な解釈が入り、真の学びから遠ざかってしまう。
ハナがこういう状態だということは、自分の中にも同じ部分があるのだと素直に認めた。