きょとんとしているハナに向かって、微笑む。
「ハナ。学ぼうとしなくていいんだよ」
「……え?」
「僕の言葉を理解しようとしなくていい。わかっている君の心で聞けばいいだけなんだから」
今の話を理解していないことは、見透かされていた。
「ハナのお父さんから聞いていたよ。また僕に教えてもらいたいと君が言ってたって。その話を断ったことは伝わっているかな?」
「はい」と頷いた。胸がズキリとした。わかっていたのだけど、実際、先生に言われると拒否されたような気になった。

「本当はね、書道をやめたことも聞いていたんだよ。通い始めた教室も頑張って通ってはいたけど、段々、行かなくなってしまったって。君は……迷いがあるようだね。昨日、君の凪を見たよ。浜辺に書かれていた」

顔が熱くなった。
隠したいことは、もう既に伝わっていた。その上でずっと先生は自分と話していたんだ。取り繕っていたのもバレていたんだ。
そのことに気づくととても恥ずかしくなった。
おまけにふがいないと感じたあの文字まで見られてしまった。
何も言えず、ただ俯いた。