「僕はね、最近、水墨画を書いてるんだよ。よかったら、見ていってほしいな」とソウメイは立ち上がり、誘った。
顔が自然と明るくなり「見る!」と即答していた。

奥の部屋に通されると、いくつかの作品が壁に飾られていた。
ソウメイの水墨画を見るのは初めてだ。ハナに教えていたときは、会話にも出てこなかったので少し意外でもあった。

手前にあったハイビスカスの絵を眺める。大胆な筆遣いに、みずみずしい清らかさや優しい生命力がみなぎっている。
黒と白しかないはずの世界に、光があった。
やっぱり、先生の作品なんだなと感じた。
「すごいなぁ。先生は」
詠嘆する。

「フランスに行ったときにできたお友達で。フランス人なんだけど、水墨画をやっていてね。その影響で僕も描き始めたんだよ」
「そうなんだ。フランス人のお友達って、先生、フランス語しゃべれるの?」