「先生!」

見つけた瞬間、駆け出していた。
今まで感じていた恐さも悩みも全て、その瞬間は置き去りにして忘れてしまった。
目の前まで行くとソウメイの笑顔があった。
二十代の後半に差し掛かった彼は、以前あった少年の名残のようなものは、すっかりなくなっていた。

「よく来たね。こんな遠くまで。大きくなったね」
「うん。先生、元気だった?」
「うん。とても元気だったよ」
「手紙、届かなくなったから心配してた」
「ごめんね。あのとき、住んでいた家が空き巣に入られてね。色々持って行かれてしまったんだよ。その中にハナの手紙が入ったものもあってね。住所もうっすらとしか覚えていなかったんだ」
「そうだったんだ」
「実家に帰ったときに、ハナに会いに行こうとも思ったんだけど、帰れなくてね。でもよかった。また会えたね」

「うん」
会えて嬉しかった。瞳が潤むと、自然と先生に抱き着いていた。
背中をさすられると、優しさの匂いがする。
「変わらないね、ハナ」とソウメイは笑う。
ソウメイは別れた日のハナの涙を思い出していた。
ハナの背はとても伸びたのだけど、まだ幼い頃と重なって見えた。

ハナは、その言葉に安心したような成長していない自分を責めるような思いが湧きたってくる。