振り向くと、カイリが自転車で追いかけてきていた。
「あれ? どうしたの?」
急いでいたのか、息が上がっている。
「先生のところに行くつもりだったんだろ。ハルカから聞いた」
「うん。そうだけど」
「先生、今、那覇に行っていないんだ」
「……え? なんで知ってるの?」
「先生から聞いたから」
「そうなんだ。なんだなんだ、なんだ。そっか。そうなんだ」
緊張が解けると、少し涙が滲んだ。恐かったのだと、無理していたのだと自分でもわかった。
どこか会えなかったことをほっとしている。
会いたいのに、会うのが恐いなんて馬鹿げていることも。

「家だけ、教えるか?」
ううんと首を振った。
「帰る」
「おう」
自転車を互いに反対に向けると、こことカイリが呟いた。
「降りると、ビーチになってる。ミナトの秘密基地」