驚いて、ハルカを見つめると
「うん。やっぱり可愛い」
びっくりした。サバサバした性格もあってか、男の子にこんな風に接してもらったことがなかった。
ドキドキして「ありがとう」と言うのが、やっとだった。
「ハナちゃん、大事なこと忘れてるでしょ?」
「大事なこと?」
「先生のお家まだ行ってないじゃん」
「あ……うん。そのうち行こうと思ってたんだけど」
「ここを道なりにいけば、突き当たったところにあるよ。一本道だから、迷わないし。行ってみたらいいよ。恥ずかしいなら、このサングラス貸す?」
と、魚の形をしたサングラスをかけようとするので「それはいい!」と笑って断った。
「行ってらっしゃい」と言うと、自転車をぐるりと反対方向に進ませた。
ハナはふくぎの木のトンネルを見つめた。
その先に先生がいる。
恐い――けど、やっぱり、会いたい。
逡巡して、ようやく身体が先生の家の方へと動いた。
トンネルに入ると、空気が変わった。とても澄んでいた。
そこを抜け、しばらく走ると道が細くなった。途中で、茂みが切り開かれて、海が見えた。
そこで立ち止まり、しばし眺めた。
(先生もここで、この景色を見てるんだろうな)
再び走り出そうとすると「ハナ!」と、遠くから呼ばれた。