「飛び込めるの? 面白そう。やりたい!」
「ハナちゃん、度胸ある」とナギサが笑う。
「ナギサくんはしたことないの?」
「ナギサはすぐケガするから、桟橋の飛び込みは出禁にされてる。おじぃにマブイ(魂)落とすって言われたもんな。そうだ。今度、おじぃに船出してもらって、シュノーケルに行こうよ。こっちの海、遠浅だから、沖に行ったほうが、魚もサンゴも沢山見られるよ」とハルカが答えた。
「うん! 行きたい!」

約束をする。それから集落の中の食堂や、ちょっと外れたところにあるカフェ、御嶽と呼ばれる神を祀る聖所があること、その中でも入ってはいけない場所があることや、ちょっとした観光スポットを教えてくれた。

一通り島を回り終えて、家の前に戻って来た。
ナギサが「じゃあ、僕、これからミナトのお迎えに行かなきゃいけないから」
「俺も、レンタサイクルの当番、カイリと変わるんだ」
「うん。今日は、本当にありがとう。おかげで色々わかったよ。助かった」
頷いて、先にナギサがその場を離れた。
ハルカが石垣に咲いていた薄いピンクのハイビスカスをひとつ摘むと、ハナの髪を耳にかけ、そこにさした。