夜、隣の家を訪ねると、小さな男の子が顔を出した。
ハナを見るなり、「わー(あなた)か、俺のねーねーになるのは」と威嚇したような顔をするので、驚いた。

「ねーねーって?」
「ねーねーは、ねーねーだ」
確かお姉ちゃんっていう意味だった。年上の女の子に使うのだろうと思って、ハナは頷いた。
「別に、ねーねーなんてほしくないけどな」
ツンとそっぽを向いたと思ったのに「俺の部屋、教えてやるど」と、ハナの手を引っ張った。

「お邪魔します」と言いながら、あがると「あ、ハナちゃん?」と、奥から琉球美人といった色白で丸い瞳の可愛らしい女性が顔を出した。
「こんばんは。ハナです。初めまして。今日からお世話になります」
「うんうん。話聞いてたよ。私は、そこにいる(ミナト)……あ、ナギサ達のって言ったほうがピンとくるかな。ナギサ達の母です。よろしくね。そうだ、なんて呼んでもらおうかな。そうねぇ、名前は亜砂海(アサミ)って言うんだけど、アサミンとかでいいかな。気軽に呼んでね」と優しいおっとりとした口調で言うので、冗談か本気なのかわからなかった。
さすがにそれは言えないと思って、首を傾げる。

ミナトは末の弟で、どうやら四人兄弟のようだ。
少しだけ、話し方に月島の訛りがある。