ナギサとハルカの兄弟ということになるのだろう。ナギサが長男なら、二番目か。だけど、人懐っこい穏やかな雰囲気の二人とは、まったく違う。よく冷えた水のようだった。
いなくなると、今までずっとそこにあったものが、こつぜんと消えてしまったような感覚になり、まるで夢でも見ていたみたいだ。
なんだかおかしくて、笑いが込み上げてきた。そのまま畳に大の字に寝そべって、目を閉じた。
(でも彼も、綺麗な瞳をしてた。やっぱり、兄弟だ)
悲しみ、寂しさ、感じたい希望、いろんな感情が胸の中を泳ぐように、溺れるようにある。恐さがまだ勝つから、触れようとして、手を引っ込めてしまう。
触れてしまった先に、光があるような気がしているのだけど。
まだもがいている自分が、それをどうしても味わいたくないと見ないふりをする。
代わりに、ここに着いてから見た海の色、木々のあおさ、人の優しさ、家の中の安らぎ、花の芽が萌えるような感覚を思い出していく。
少しして、心が落ち着いた。
うん、大丈夫と自分に言い聞かす。リンリンと風鈴の音が、優しく響いた。