「先生が何をしているか、詳しくはわからないけど。これは、去年、民宿を増築したときに書いてもらったんだ。これが届いたとき、家族みんなで感激して、外に飾るのはもったいないとかもめたんだよね。今も、この字を見る度、なんだか、ハッとさせられるんだ。だから、みんなの目に触れるこの場所に飾るべきだったんだなって、今ならわかるよ」
ナギサがのびのび言うと、ハルカも
「こういうの、よくわかんないけど、勢いがあってかっこいいよね」

素直な様子に笑いながら、泣きそうになる。その理由をハナはわかっていた。どうにかこらえながら、うんと頷いた。

「もしかして、先生を追いかけてきたの?」と、ナギサが鋭いことを言うので、ハナは「違う。あ、そうだけど、違うよ」と、急に慌てる。

追いかけてきたというと、沖縄旅行でダイビングをしに来たお母さんにお父さんがひとめ目ぼれして、東京まで追いかけてきたという話を思い起こさせて、それとは違うと言いたくなった。
あくまでも自分は、弟子にしてもらう為だ。