船が停まる。
「着いた。足元、気をつけてね」
ナギサが言ったそばから躓いたので、笑った。
「こいつ、いつもそう。よく転ぶし、ケガばっか。一緒にいると危ないから、ハナちゃん巻き込まれないように気をつけてね」
「人聞きが悪いよ、ハルカ」
「本当のことじゃん。海に足いれただけでハブクラゲに刺されたの誰だっけー?」 
「それは、言わない」

笑いながら桟橋に降りると、この船に乗る乗客が数人並んで待っていた。
それと入れ替わるように向かうと、赤瓦の待合所が見えて、手前に二台の車が停まっている。見覚えのある大柄の男性が立っていた。ヨウイチだ。

「ハナ!」
「お父さん!」
「よく来たな」

駆け寄ると、ヨウイチは、ハナの頭をぽんっと撫でた。大きな口を開けて豪快に笑う姿も変わっていない。だいぶ肌は日に焼けて炭のようだけど。呆れながらも、元気な様子に安心した。

「ナギサも一緒だったのか。二人とも、ありがとな」
お父さんは、ハナの肩越しに向かってお礼を言った。