「あれが月島だよ」とハルカが言うと、おーりとーり月島と書かれている防波堤が見えた。
「さっきも思ったけど、おーりとーりって何?」
空港に降り立ったときにもそういえば、目についた言葉だった。
「ようこそって意味だよ。めんそーれって聞いたことある?」
ナギサが言う。
「ある。沖縄の方言だよね」
「そうそう。それと同じ。こっちの方言は沖縄本島の方言とは全然違うんだよ」
「へえ」
「そういえば、島の人も沖縄県民っていう意識があまりない感じするね。島人(シマンチュ)って感じ?」とハルカがどこか他人事に言う。
そういえば二人の顔立ちも話し方も本土と通じるものがあるように感じる。それがすごく不思議だった。

「二人とも沖縄の訛りってないんだね」
ハナが訊ねると
「うん。僕らも産まれたの東京だから」
ナギサが答えた。
「そうそう。こっちに来たのは三年前だから」とハルカも頷いた。

「月島のおばあちゃんが亡くなったのが、四年前なんだけど、続けておじいちゃんも体調崩しちゃってね。それでこの島に戻りたいって母さんが言ってこっちに来たんだよ」とナギサが静かな口調で教えてくれた。
「そうなんだ。大変だったんだね」
気持ちを察して言うと、
「おじぃ、今じゃ、家の中でいちばん元気っていうくらい、元気だよ」とハルカがげんなりした顔で言うので、ハナはおかしくて笑った。