なんのためらいもなく女の子に可愛いと伝えてくる男の子を初めて見て、ハナは面食らった。
だけど、なんだか面白いひとだなと思った。
「高木葉凪です。よろしくお願いします」
改めて自己紹介をすると、帽子を拾ってくれた彼が「僕はハルカの兄の渚です。よろしくね」
兄弟だったらしい。言われてみると、ハルカの瞳は見えないけど、通った鼻筋やシャープなあご、スタイルの良さなど通じるものがあった。
ナギサはふんわりとした笑顔で、ハナに帽子を優しくかぶせた。スマートな仕草に、ハナは顔を赤らめた。
「呼び方ハナちゃんでいい? 敬語とか使わなくていいからね!」
「いや、偉そうに言ってるけど、ハルカの方が一つ下だからね」とナギサがやんわり突っ込みを入れた。ハルカは中学二年生だ。
「ナギサくんは、何個上ですか?」
「今、高一だよ。僕にも敬語じゃなくていいからね」
(そう言われるけど、高校生だもん。敬語になっちゃうよ)
少し委縮したものの、二人の穏やかな雰囲気にすぐに身体が緩んだ。