差し出された帽子を受け取ろうと手を伸ばすと「あれ?」と、ハナの顔を見て目を丸くした。
なんだろうとハナは首を傾げる。

「あ、ハナちゃん! ハナちゃんでしょ!」と、突然、打ち上げ花火のような勢いで呼ばれるので驚いた。
高速船からかけおりてきた少年が、ハナに向かってにこやかに手を振っている。
緑のキャップに赤いTシャツにハーフパンツというラフな格好をして、おまけみたいにピンク色の星のサングラスをかけている。
どこかふざけているのに、着こなしてる感がある。小柄だけど、すらりと伸びた手足のせいかもしれない。

誰かわからないけど親し気な様子に、ペコリとお辞儀をした。
それから、遅れて気がついた。
「知念くんですか?」
お迎えというからもっと年上の男の子が迎えにくるものだと思っていた。ハナと同い年くらいに感じた。
「そう! 知念遥(チネンハルカ)です。迎えに来ました。ハナちゃん、写真で見たよりも可愛いね。やったね! 嬉しい! よろしくね!」と両手を包むように握手すると、ブンブンと上下にふった。