チャンピオンベルトを巻いた具志堅用高は桟橋の手前で見つけられた。
(そういえば、本当はボクシングの人なんだっけ?)
思い出すと、待ち合わせの時間ぴったりだった。
ここから見える海もとても明るい。

日除けにかぶっていた麦わら帽子を目印に伝えてあるけど、どういう人が迎えに来てくれるのだろう。
ヨウイチから知念のおじぃの話はよく聞かされていたのだけど、孫の顔をハナは知らなかった。
そわそわした気持ちで待っていると、突風で帽子が飛ばされた。
慌てて追いかけても追いつけない。高速船を待つ列まで飛んでいき、制服の少年にぶつかって落ちた。

「ごめんなさい」
駆け寄ると、彼が足元の帽子を拾った。
「君の?」
「はい。ありがとうございます」

目鼻立ちが整った優し気な雰囲気の少年だった。澄んだ瞳がこの海のように綺麗で、先生と初めて会った日のことを思い起こさせた。