同意を求めたはずなのに、ハナはただ閃いたと言うように声を弾ませた。
「あだ名、やなきょんとかどう?」
「え? 俺の原型がないけど。てか、話聞いてた? 絶対聞いてなかったよね、ハナちゃん? もう悪ガキから離れようよ」
「原型あるじゃん、悪ガキっていう。ね、ミナト」とナギサが優しく言うと、わけのわかってないミナトも「そうば」と同調する。
「みんなの意見も取り入れつつ可愛い響きにしてみたんだけど、どうかな?」
ハナがどうだって顔をしているので、一気に心がなえた。
「やっぱり、ハルカでいいや。ハナちゃん、やなきょん呼び絶対禁止だからね」と、本気のハナに釘をさした。
扉が開く気配にナギサが気づいて「お帰り」
カイリの一歩後ろにヒバリがいた。
「スイカ」と言ってカイリがテーブルに着くと、ハナの隣にヒバリが腰かけた。 にこりと微笑むので、なんだかホッとした。
「ハルカ今日から、やなきょんって名前になったど」と、ミナトが教える。
「へー。そんな名前で呼ばれたかったのか。やなきょん。ダサ……」とカイリが淡々と言うので「俺がやなきょんって呼べって言ったんじゃねーよ!」と否定した。
「私がつけたあだ名なのに」と、ハナが落ち込むので「それとこれとは、違うから! って、なんで俺が気を遣わなきゃなんねんだよ」とジタバタするのでミナトが笑った。
ハナは不貞腐れながらも、戻って来た二人の空気が、さっきよりも穏やかに感じていた。きっと仲直りが出来たのだろうと、そんな気がして胸が明るくなった。