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(あいつら、わかりやすくいなくなりやがって)
庭に二人きりで残されてしまい、ハナ達の白々しい行動に心の中で呆れる。
線香花火も消えてしまったし、話すことが思い浮かばない。付き合ったと言ったって、数ヶ月程の出来事で、たまに一緒に帰ったり、ヒバリの飼い犬のメロの散歩をした位であの頃の自分達がなにを話していたのかさえ、おぼろげだ。
「……あれ、元気? メロ」 とようやく言葉が出た。
「うん。元気。メロのこと覚えてたんだ」とヒバリは驚きながらも微笑む。
「うん」
写真見る? とスマホの画面をカイリに見せる。ああ、こんな犬だったなとどこか懐かしくなる。
「ごめんね。カイリくん。お家に戻っていいよ」
ヒバリが気を遣って言うので、首を振った。戸惑っていることが伝わったのだと察すると、ようやく冷静になった。
「いや、この状況、俺のせいだから。ごめん。嫌じゃなかったら少し話したいけど」
「嫌なわけないよ。話せるのが嬉しいくらいだよ」と微笑む。
転入してきた頃のヒバリを思い出した。自己紹介をすると、今みたいな優しい笑顔を教室の中に向けた。