今にも泣きそうなヒバリを自室まで通した。お茶を取りに離れて戻ると、ヒバリは落ち着いた様子で「ごめんね。少し泣いちゃった」とくったくなく笑った。

「ううん。ごめんね、私も驚いてなにも言えなかった」
「だよね。急に泣いたら、驚くよね。さっきカイリくんのお兄さんがいたから、会う可能性もあるかなって思ってたんだけど、会ったらダメだった。好きって思っちゃって」と喉をつまらせたけど、気丈に続ける。

「カイリくん、突然転校しちゃって、どこに住んでるのか全然わからなかったんだけど、こんなところにいたんだね。そりゃ、どこかで会えないかなって探したって、見つけられるわけもなかったか」と、明るく振舞う。

会えないか探すなんてよっぽどだと思った。
ヒバリがまだカイリのことが好きなのだと知ると、切なくもなる。
だって、カイリはもう終わったことのようにヒバリのことを話していた。

「ヒーちゃん……」
「でも会えて嬉しかった。あんまり話せなかったけど、元気そうでよかったな」

振られたんじゃないとカイリは言っていたから、恐らく別れ話を切り出したのは、カイリからなのだろう。