その便りが急に届かなくなってしまったのが、二年ほど前になる。

ハナが出した手紙も最後には宛先人がいないとのことで、返ってきてしまった。
ソウメイの電話番号なんてものも知らなかったし、思い切って彼の実家を一度訪ねてみたものの、わからないと言われてしまった。
人気書道家として名が売れていたにも関わらず、現在は、表舞台から姿を消したようで、インターネットで探してみても、彼の最近の活動の様子もわからなかった。
(どこかで元気に暮らしてればいいけれど)

そんなときだった。
別居し、最近、月島にダイビングショップを営み始めた父の洋一(ヨウイチ)から、「ハナ、喜べ。ソウメイ先生を見つけたぞ」と連絡があった。
驚きすぎて声が出なかった。代わりに安堵の涙が滲んだ。
「先生、どこにいたの?」
「月島だよ。二年前くらいから、ここを拠点に作家活動しているらしいぞ。元気そうだった。ハナのことももちろん覚えてたぞ。元気にやってると言ったら、安心してた」