レンタサイクルに自転車を返して、歩いて民宿へ向かった。
ヒバリは、急に立ち止まると意を決した顔をして「……私、今日、実はね」と鞄の中を開けた。だけど、ハナに渡そうと決めていたものがどうしてかそこに入っていなかった。
内側のポケットや外のポケットを探してみるけど、見当たらずワタワタと焦ってみても、どこにも見当たらなかった。もしかして落としたのかもしれない――そう気づくと、気が遠のいた。
「どうしたの?」
「ううん。ごめん。会えたら渡そうってお土産持ってきたんだけど、鞄に入れ忘れちゃったみたい」と、罰悪そうに笑った。
「そうなんだ」とハナは得に気に止める様子もなく、ほっとした。探しに行こうかと思ったのだけど、理由をハナには言えなくてやっぱりやめようと自分に言い聞かせ留まった。
民宿の前に着くとヒバリは「わぁ」と歓喜の声をあげた。ブーゲンビリアのアーチが愛らしく招いてくれている。
「可愛いね」
「可愛いよね」
顔を見合わせて笑う。写真を撮ろうと、ツーショットになる。
撮影した写真を二人で眺めていると、「ハナ」と呼ばれた。
カイリで「今日、飯、少し遅くなるって」と言うので「わかった」と返事をした。
そういえば、二人は面識があるんだとハナが思い出すと同時に
「カイリくん」
「前園?」
と驚いたように見つめあっていた。