「先生、この島に移住したんだよ。作品は書き続けてるみたいだけど、昔みたいにテレビとかには出なくなったみたい。
実はさっき、言わなかったんだけど、この島に来た理由のひとつが先生に会いたかったのもあったからなんだ。先生の教室辞めてから、何年も会ってなかったし、一時期音信不通だったんだけど、お父さんからこの島に先生がいること聞いたら、いてもたってもいられなかったというか……それで来ちゃった」とはにかんだように笑う。

幼い頃から、ハナはいつも行動的だった。ヒバリはどちらかというと、ひとがやっているのを見てから行動するタイプだと自分でも思っていたので、真逆のハナを憧れの目で見ていたし、どこかうらやんでもいた。
全く変わっていないのだとわかると、溜め息が出た。

「ハーちゃんのそういうところ、すごいよね」
「すごい?」
「だって、ハーちゃんが書道教えてもらってたときって、すごい有名人だったじゃん。そんなひとに教えてもらえてたのもすごいし、何年も会ってなかったのに、急に会いに来れるのってすごいと思うよ。自信がないと出来ないよ」
「確かに……ソウメイ先生に教えてもらえたことは、すごく恵まれてるなって、今も感謝してるよ」とハナが清々しく笑うと、ヒバリは胸の中に秘めていた思いが溢れそうになる。