「カイリ呼ぶ? 意外に覚えてるかもよ」とハナがポケットからスマホを出すので、ヒバリは止めた。
「呼ばないで」
ハッとした顔をして「覚えてないと思うから、呼ばなくて大丈夫だよ。ありがと、ハーちゃん」
様子が変だとハナは感じたのだけど、呼ばないほうがいいのだと察して「じゃあ、この島、案内するよ。って、私もまだ来て一か月も経ってないんだけどね」
「うん。ありがとう」
そう言って、ナギサから自転車を借りた。
会うのは数年ぶりなのだけど、気兼ねなかった。
ビーチを回って、この島に一軒だけあるカフェでランチをすることにした。
あること自体は知っていたのだけど、ハナがここに来るのは初めてだった。
緑に囲まれ、まるで森の中にお店があるみたいだ。だけど、店内は明るく天井や壁に飾られているドライフラワーに安らぐ。
「可愛いお店だね」と、ヒバリも顔をほころばせた。
共通の友達のことや、ヒバリの学校生活、ハナがここの島に来てからのことを話していると、あの頃となにも変わらないような気がした。