うーんと悩んでから
「やっぱり、しばらくは飾っておくね」
と、笑うので
「また、彫りたくなったら言えよ。そのくらいしか出来ないし」 と自然に言ってて、自分でも驚いた。
「え? また彫ってくれるの?」 とハナが顔を近づけるので、ドキッとして思わずハナの肩にかかっていたタオルでしめりけの残っていた髪をわしわし拭いた。
「わ」
「ちゃんと拭けよ」
「へへ。暑いから、いつも途中でやめちゃうんだよね」
「ふうん。長いと大変なんだな」
「しばらく暑いんでしょ? 髪切ろうかな」と、ハナが自分のセミロングの髪に触れる。
「いや、別に今の長さでいいと思うけど」
「そう? じゃあカイリが言うならそうしよっかな」
なんでもない会話だというのに、最近ハナといるとドギマギとしてしまう。そんな自分を隠したくて、「じゃあ、おやすみ」とカイリは唐突に立ち上がった。
ハナは「あ、ありがと! 大事にするね」と伝えた。立ち止まり「ああ」と素っ気なく答えた。