夕方。
斜陽傾く時間に 結局、
レンが 引きずるようにして、
カスガを ハジメのオフィスから連れ出し
今、レンとカスガは、レンが運転する車に居た。
予定通り、片山津温泉で泊まる為だ。
「カスガ、もう 落ち着いたな?。今日は、もう このまま宿に行くが、いいな?」
車は、オフィスから国道に入って、干潟の柴山潟に向かっている。
宿泊先は、一応 仕事で来ているので、ビジネスで良く使われる系列だ。
夫人が帽子を被って広告塔になっている 逆張りキャッシュ仕入れで全国展開するグループホテル。
押しだまった ままのカスガを
ミラーで伺いながら、レンは 白い手で ハンドルを握り直す。
「カスガ、今のうちに言っておくが、」
レンがそう言うと、カスガの肩が僅か少し 動いた。
外の景色は、林道のようで、前後が同じ様にみえる。
車の案内がなければ 本当に迷いそうだ。
「これから、カスガだけで、北陸を車で回る事もある。だから、敢えて伝えるが、周りの景色でわかるだろう?夜は なるべく 1人の時は、移動をしない方がいい。」
カスガは もっと別の話をされるだろうと考えていたのか、助手席で
狐に摘ままれた顔をしている。
「この辺りは、まだ平地だから
マシだが、山間部で 蛇行した道は、車のヘッドライトしかない
場所もある。案内を見るヒマも
ないぐらい、ハンドルを切る道もある。」
カスガは、ようやく 窓の外を
確認して 納得した 顔をした。
「こういうのも、変な話だが、
俺は夜、北陸のハイウェイを
走らせると、人外な力が通って
いるような気配を感じたりして、
肝を冷した事もある。『伊勢が表なら、能登は 裏のパワスポ』も、
俺は頷けるよ。何より、昔は、
拉致も多い半島だった。1人で回る時間は、夕方までにするのが、
ベターだろうね。」
レンが 静かに 説き伏せるように
助手席の カスガに語ると、
「もっと、責任とか、信用、謝罪とか 説教されるかと思ってたっす。」
カスガが、静かに呟く。
「まあ、そうだな。」
レンは、それだけしか 言わない。
景色は ようやく街に入り、
薄暗くなる中、ポツポツと幾つかのホテルの灯りが並び始めた。
温泉郷に入ったのだろう、茶屋にあるような 灯明が並んでいる。
「…ホテル、なんか何時もと違う感じっすね、」
カスガが、和風ホテル前に着くと
声を少し 上げた。
「まあ 出張宿だよ、これでも いつものグループホテルだ。それより、今回は1人部屋がないから、俺と一緒だ。四六時中、上司と一緒で、悪いな。」
レンは 苦笑しながらも、
車をホテルに入れて、
案内で ロビーに向かう。
カスガも周りを見回すが、
エントランスは広く、
天女が天井で舞い、
大階段の両脇には 青磁の大壺が
飾られている。
グループが『錦に貢献修得』したという、
もと高級老舗旅館だけはある。
入り口の和風重厚と、
中の解放感は、他のグループホテルとは一線を画していた。
まさに グループの本陣が金沢と感じる。
2階フロントで レンが受付をして、車のキーを預ける。
好印象なフロントマンが 、
片山津温泉で最大の絶景風呂から、
巨大噴水のライトアップも
見れると、説明をしてくれた。
「カスガ、いつもの出張通り、
朝食だけだ。夕メシは、 ホテルの日本食でいいか?」
カスガは、
少しボーッとしながら、
フロントビューになっている
一面ガラス張りから、
干潟湖を眺めていた。
「おまえ、大丈夫か?ハジメさんの所に顔出したのは、どうも 間違いだったな。」
レンは カードキーの1枚を、
カスガに渡しながら そのまま
食事処にカスガを促す。
「…すんませんっ。やっぱり、ハジメさん所は、当分、、行く事ないですか。」
また、カスガの歯切れが悪いと、
レンは察し、
「ハジメさんには、俺から また詫びを入れておくから、大丈夫だ。」
とだけ、言い渡して、二人は
すぐに食事をした。
結局
その後、部屋に入って、
露天風呂から帰ったレンは、
部屋からカスガの姿が
消えるまで、
カスガへの疑念は
全く脱ぐ得なかったのだ。
そして、
フロントで レンタカーの鍵を、
カスガが持って行った事を
確認すると、
ハジメに連絡を入れた。
「ハジメさん、すいません。
やっぱり、カスガが 宿を抜けて、そちらに向かっていると思います。」
そう言って、レンは
フロントビューから見える
チェックイン時よりも、
鮮やかになった
干潟湖に映りこむ
七色のイルミネーションと、
金色に輝く 浮御堂を 見つめる。
電話の向こうの
ハジメの声を 捉えつつ。
「あとは、ハジメさん次第かな」
と レンは 思考にふけった。
斜陽傾く時間に 結局、
レンが 引きずるようにして、
カスガを ハジメのオフィスから連れ出し
今、レンとカスガは、レンが運転する車に居た。
予定通り、片山津温泉で泊まる為だ。
「カスガ、もう 落ち着いたな?。今日は、もう このまま宿に行くが、いいな?」
車は、オフィスから国道に入って、干潟の柴山潟に向かっている。
宿泊先は、一応 仕事で来ているので、ビジネスで良く使われる系列だ。
夫人が帽子を被って広告塔になっている 逆張りキャッシュ仕入れで全国展開するグループホテル。
押しだまった ままのカスガを
ミラーで伺いながら、レンは 白い手で ハンドルを握り直す。
「カスガ、今のうちに言っておくが、」
レンがそう言うと、カスガの肩が僅か少し 動いた。
外の景色は、林道のようで、前後が同じ様にみえる。
車の案内がなければ 本当に迷いそうだ。
「これから、カスガだけで、北陸を車で回る事もある。だから、敢えて伝えるが、周りの景色でわかるだろう?夜は なるべく 1人の時は、移動をしない方がいい。」
カスガは もっと別の話をされるだろうと考えていたのか、助手席で
狐に摘ままれた顔をしている。
「この辺りは、まだ平地だから
マシだが、山間部で 蛇行した道は、車のヘッドライトしかない
場所もある。案内を見るヒマも
ないぐらい、ハンドルを切る道もある。」
カスガは、ようやく 窓の外を
確認して 納得した 顔をした。
「こういうのも、変な話だが、
俺は夜、北陸のハイウェイを
走らせると、人外な力が通って
いるような気配を感じたりして、
肝を冷した事もある。『伊勢が表なら、能登は 裏のパワスポ』も、
俺は頷けるよ。何より、昔は、
拉致も多い半島だった。1人で回る時間は、夕方までにするのが、
ベターだろうね。」
レンが 静かに 説き伏せるように
助手席の カスガに語ると、
「もっと、責任とか、信用、謝罪とか 説教されるかと思ってたっす。」
カスガが、静かに呟く。
「まあ、そうだな。」
レンは、それだけしか 言わない。
景色は ようやく街に入り、
薄暗くなる中、ポツポツと幾つかのホテルの灯りが並び始めた。
温泉郷に入ったのだろう、茶屋にあるような 灯明が並んでいる。
「…ホテル、なんか何時もと違う感じっすね、」
カスガが、和風ホテル前に着くと
声を少し 上げた。
「まあ 出張宿だよ、これでも いつものグループホテルだ。それより、今回は1人部屋がないから、俺と一緒だ。四六時中、上司と一緒で、悪いな。」
レンは 苦笑しながらも、
車をホテルに入れて、
案内で ロビーに向かう。
カスガも周りを見回すが、
エントランスは広く、
天女が天井で舞い、
大階段の両脇には 青磁の大壺が
飾られている。
グループが『錦に貢献修得』したという、
もと高級老舗旅館だけはある。
入り口の和風重厚と、
中の解放感は、他のグループホテルとは一線を画していた。
まさに グループの本陣が金沢と感じる。
2階フロントで レンが受付をして、車のキーを預ける。
好印象なフロントマンが 、
片山津温泉で最大の絶景風呂から、
巨大噴水のライトアップも
見れると、説明をしてくれた。
「カスガ、いつもの出張通り、
朝食だけだ。夕メシは、 ホテルの日本食でいいか?」
カスガは、
少しボーッとしながら、
フロントビューになっている
一面ガラス張りから、
干潟湖を眺めていた。
「おまえ、大丈夫か?ハジメさんの所に顔出したのは、どうも 間違いだったな。」
レンは カードキーの1枚を、
カスガに渡しながら そのまま
食事処にカスガを促す。
「…すんませんっ。やっぱり、ハジメさん所は、当分、、行く事ないですか。」
また、カスガの歯切れが悪いと、
レンは察し、
「ハジメさんには、俺から また詫びを入れておくから、大丈夫だ。」
とだけ、言い渡して、二人は
すぐに食事をした。
結局
その後、部屋に入って、
露天風呂から帰ったレンは、
部屋からカスガの姿が
消えるまで、
カスガへの疑念は
全く脱ぐ得なかったのだ。
そして、
フロントで レンタカーの鍵を、
カスガが持って行った事を
確認すると、
ハジメに連絡を入れた。
「ハジメさん、すいません。
やっぱり、カスガが 宿を抜けて、そちらに向かっていると思います。」
そう言って、レンは
フロントビューから見える
チェックイン時よりも、
鮮やかになった
干潟湖に映りこむ
七色のイルミネーションと、
金色に輝く 浮御堂を 見つめる。
電話の向こうの
ハジメの声を 捉えつつ。
「あとは、ハジメさん次第かな」
と レンは 思考にふけった。