「ふむ……確かに、魔法士育成学校は基本全寮制ですし……突然明日から共学と言われてもなかなか難しいのかもしれませんね」

「……じゃ、じゃあ独学で! 独学で試験を受けるとかは?」

とりあえずそれくらいしかアイデアが浮かばなかった。

「魔法士のテストは、毎年内容が違い筆記や実技以外にも様々なものがあります……しかもその出題の半分が学校での活動内容からのもの……独学で試験に望むなんて愚の骨頂ですよ? しかし、ミーア様がどうしてもと仰るなら……」

「……なら?」

「僕が、毎日超過酷な勉強メニューとスケジュールを作り、朝から晩まで付きっきりでの叱咤激励をしながら、試験合格を導いても……」

「それは絶対にイヤ!」

「ならば、学校へ行かれるのですか?」

「ミーア……」

「ミーア様」


二人の視線が私に注がれる。

だって、そんな事……急に言われても……
ただでさえよくわからないこの世界に来て、家の決まりでならなきゃいけないモノの為に性別を偽る事まで強制されるなんて……

私はもうコレ以上強要されるならこの家を出て行こうと思った。
もちろん行く当てなんてないけど、きっとなんとかなる!

こういう時、ポジティブな思考になるのは私の良いところだ。

「男になんてなれない!!」

「でしょうね」

「やっぱ無理か~!!」

だが、二人共私の思っていた反応とは全く違いルミエールは笑いを堪えていたし、父に至ってはベッドに寝転がる始末だった。

「えっ!? ちょっと……? アノ?」

戸惑う私とは違い、二人は未だに笑い転げている。

「いやいや、物語では確かにあるが本当にそんな事なんて……ましてやウチのミーアが……」

「そ、そんな笑ったら可哀想ですよ!? 旦那様……ぶふっ!」

なんか──
コイツら失礼じゃない?

「いくらお嬢様が、8歳の時の詩の朗読会で……『私は蝶』と言いながらソファからダイブして手首の骨を折っているからって」

「はっ!? 覚えてないし! 関係なくない!?」

「確かに……9歳の時の詩の朗読会では『私は猪』と言ってテーブルに突っ込んで足の骨を折ったりしたが……」

いや、過去の私アクティブ過ぎない?
詩の朗読会だよね?
死の朗読会じゃないよね?

「まぁ、冗談はさておき」

また冗談だったの?
私この人達のテンションについていけないんだけど……。