男として生きる──
確かに、今そう言った。
「あの……お父様、男として生きるというのは一体どういう意味ですか?」
「────っっ!?」
めっちゃ驚いた顔で父はコチラを見てくるが、言ったのは紛れもなくお前だ。
「……聞こえてしまったのなら仕方ない、すまない……お前にはこれから男として人生を歩んでもらいたい」
「旦那様……大丈夫です。ミーア様なら今でもオスゴリラの様に十分猛々しいですから……」
へー、この世界にもゴリラいるんだ。
つーか、本当にルミエールこいつなんなん?
「確かに……そうかもしれないが……」
「オイっ!」
神妙な顔つきでそう言った父に、私はツッコミを入れる事しか出来ない。
「冗談はさておき旦那様、審問会の結論は変わらなかったという事ですか?」
「冗談に聞こえなかったけど……審問会って?」
それは私が初めて聞く言葉だ。
「審問会は、王族直属の魔法士を管理また運営している公的機関です。 魔法士の選定や決まりは審問会が行っております」
捲し立てる様に説明されたが、イマイチ私にはまだよくわからない。
ともかくこの国において、王室直属の魔法士というモノがどれだけ名誉があり、そしてこのトランダル家が代々その役割を担って来た事だけはルミエールから聞かされていたので、恐らく審問会とかいうトコはまあ、なんだか偉そうな人が沢山いる様な場所なのだろう。
「審問会の決まりでは、昔から王室直属の魔法士は男子でなければならない決まりなのだよ……そこで、私はなんとか女子でも受け入れてもらえないかと言ってみたんだが……」
父は眉をひそめて、俯いた。
そして……
「オッケーが出ました~っ!!」
今度はそう言ってヘラヘラとしていた。
一回シメようかこのオッサン。
「ほ、本当でございますかっ!?」
「いや、パパ本当に今回ガンバったのよ? もうダメかなって思ったよ?……だけどね、粘ってみるもんだね! オッケーが出たんだよ~」
「えっ? じゃあ……」
私はてっきり、その魔法士とやらになる為に男性として生きろと言われるのかと思ったのだが……
許可が取れたのなら、その必要はないのではないだろうか?
「うん……王室直属魔法士になるには、確かに女性でも良い事になったんだけど……問題はね」
「問題は?」
「現存する魔法士育成学校は全て! 男子校なんだよね~」
「はぁぁぁっ?」
「そのほら、法律はね変えられたんだけど……学校まではねちょっとまだ色々と……急に言われても時間かかるみたいで……」