「なんじゃコレ─────っ!?」

次の瞬間、思わず叫んでいた。

私の頭の中の理解という部分が、機能しなくなっていた。

だって……
だって、鏡の中に映っていたのは……

私ではなく、知らない金髪の美少女だったからだ。

何故?
どうして?
Why?

考えても全く答えが出てこない。
そりゃあ、私だって一度は金髪美少女に生まれ変わりたいって思った事が無いと言ったらウソになる。

確かに、一度でいいからなってみたかった。

でも、急に見た目が変わりすぎている事には戸惑いを隠せない。

はっ!?

もしかして……私は事故で強く頭を打ちそのショックから、自分の姿が金髪美少女に見える様になってしまったとか?

まじまじともう一度鏡を見た。

そこにいるのは私であって、私ではない。
私の良く知っている自分とはかけ離れた美少女。

綺麗な瞳はカラコンでもないのに空みたいに青いし……

髪もこんなに長いのに地毛だからか、そんなに絡んでない。
コレがウィッグだと大惨事だ。

体は華奢だが、背は前よりちょっと高い気がする。

コスプレの小道具に躓いて、頭打って、気が付いたらロココ調の趣味の悪い病室で、自分の姿が金髪の美少女に見えている。

コレは……この状況は……
めっちゃヤバいヤツな気がしてきた。

そして呆然としている私に、更に驚く事が起きた。

コンコン……
分厚い扉をノックする音

「失礼致します」

中に入って来たのは、看護師さんとは考えにくいビシッとタキシードを着た青年だった。

「おはようございます、おかげんはいかがですか?」

その見た目と言葉づかいに、上下揃いのきっちりとした正装。
まるで執事か何かみたいだ。

その上、青年には額に小さな角の様なものが生えている。

「えっと……アノ……」

ともかく今は、聞きたい事がいっぱいある。
この場所はどこなのか?
私はどうなっているのか?

そして……

私の荷物はどこにあるのか!!?

コレ重要! めっちゃ重要!!

どれだけの製作期間と予算をかけ、今回の衣装や小道具を用意したか……
バイトに明け暮れ、親にも成績の事で色々と言われたりしながら何とか完成させた諸々を、その無事を確認したかった。

「あっ、あの……すみません……ちょっとおたずねしたいのですが……」

私がそう彼に聞くと、何だか信じられない様なモノを見た様な目を向けて来られた。

「……っ……ミーア様……?」

ミーア様──?

今度はそう言われ、聞いた事もない名前で呼ばれ何だかむず痒い。