いくらそういうのに鈍感な私でも、コレは気づく。
しかし、残念ながら私の恋愛対象は一応男性で、更に私は今性別を偽っているのだ。
彼女の気持ちは残念だが受け取れない。

「セ、セーラ様!! 早く硝子の花を……」

私はすぐに彼女の体から離れると、花の方へと駆け寄った。
そして、茎にそっと手を添えて引いてみる。
花はスルリと綺麗に根から抜け、そしてその途端白くまぶしいくらいに輝き出した、

────!?

眩い光が一気に私達の周りを包み込み、そして……

気がつけば、扉を開ける前にいた元の場所へと戻って来ていた。

「ココは……さっきの?」

しかし、先程とは雰囲気がだいぶ違っている。

「改めて~入学おめでとう~」

背後からはクラッカーの様な物が、弾ける音が鳴り響く。

振り返るとそこには、ニコニコと笑う校長の姿があった。

一瞬で辺りは華美な装飾を施されたホールに塗り替えられてゆく、いつの間にか他の生徒達もどこからかぞろぞろと現れて、この状況にキョロキョロと周りを見回していた。

「さあ、レクリエーションの後は毎年恒例の入学パーティーです! 皆さん、テーブルの上の料理を存分に楽しんで下さい、音楽~」

校長が指で指揮を取ると、ホール内には立派なオーケストラでもココにいるのかと言わんばかりの曲が流れ出した。

みんなはそれぞれテーブルに近づき、和やかに微笑んで談笑を始めたが……

私は全くそんな気分になれない。
明らかに周りの生徒達と空気感の違っている私達に、校長は話しかけて来た。

「どうしました? レクリエーションは楽しめませんでしたか?」

「……全く」

ノアの回復魔法があったとはいえ、ウチの執事がケガを負い、私やセーラも危険な目にあったのだ。
アレを楽しめた? なんてセリフを言うのは、どこぞの戦闘狂だけだと思う。

「あんな危険な目に合って、楽しめたかなんて……」

「危険な目?」

「ノアが、彼が回復魔法が使えたから良かったモノの……ルミエールがケガを負わされて」

「け、ケガっ!?」

校長の顔色はみるみる変わっていく。
そして……

「アナタ達、ちょっと待っていて下さいっ!」

そう言って走って行ってしまった。
それから数分くらいで、すぐに校長は血相を変えて戻って来た。

「……大事なお話があります」

校長はそう言うと、私達にちょいちょいと手招きし小さな円陣を作らせた。