洞窟の中は以外にもかなり広かったが、中には幾つもの松明が街灯のように灯り、視界は思ったよりも明瞭だった。
それでも薄暗闇の中では、この洞窟の奥が一体どんな風になっていてどこまで続くのか皆目検討が付かない。
一番先頭をノアが行き、その後ろを私とセーラが……そして一番後ろにルミエール。
隊列を崩さず万が一の事態に備え慎重に進んで行く。
だいたい、このレクリエーションとは何が目的なのか全く理解出来ない。
ただの遠足にしては、わざわざこんないかにもな怪しい洞窟に来させる理由がわからないし。
試験? というワケでも無さそうだけど……
そんな事を考えてるうちに、いつの間にか洞窟の最奥に私達は来たらしい。
「どうやら行き止まりのようですね」
ルミエールが周囲を見回して言った。
「ねぇねぇ、花ってもしかしてアレの事?」
ほぼそれと同時に、ノアが指を指し私達は一斉にそちらに視線を向ける。
「……多分……そうみたいだが……」
「あ……アレですわ、間違いありません」
確かに、岩の影に半透明の花弁のキラキラとした花が見えた。
だけど──
「アイツ、なんだろうな~」
「大変興味深い生物ですね」
花のすぐ隣には、見た事もない不思議生物が鎮座していたのだ。
真っ白い毛にモサモサと覆われ、大きさは40センチくらい、つぶらな瞳がパチパチと瞬きして向こうもこちらを見つめている。
私個人の感想から言えば、ちょっとデカい昔おばあちゃんのお家で飼ってた犬のポメラニアンみたいな生物。
硝子の花を守護する生き物? とか?
「襲って来る気配は無さそうだけど」
「え~っ、わっかんないよ~花を取ろうとしたらいきなり豹変するとか~?」
「ま、まさか~……」
けれどもしばらくは、そいつが何なのか? 何でこんな所にいるのか、わからない以上は無闇に動く事も出来ず、ただじっとして向こうの様子を伺う事しか出来無かった。
すると──
『キューン……キューン……』
突然、白いふわふわ生物は正に子犬みたいに鳴き出したのだ。
「 なっ、何ナニ~? 何でアイツ急に鳴き出したの?」
「仲間でも呼んでいるのでしょうか?」
「か、可愛いですわ……」
ふわふわは、その可愛いらしい見た目と鳴き声ですっかりセーラを虜にしていた。
「ワタクシ達に怯えているのかもしれません」
そう言って彼女は私の手を離す。
「セーラ様!?」
「大丈夫ですわ、ワタクシがアノ子を……」