「こ……ココは……」
霧が立ち込める森、二本の柱。
その奥に大きな建物の影が見えた。
「アレが……学校?」
馬車の中から見た時とはまたまるで違う、影とも何とも形容し難いその大きな物体は形状を留める事無く、蜃気楼の様にユラユラと森の中で揺れていた。
「やあ、新入生かな? 入学おめでとう」
突然、後ろから声が聞こえた。
振り返るときちんと正装した、オールバックの若い男がニコニコと立っている。
「えっ……えっと……アナタは?」
「私はこの、セブンスフォース魔法士育成学校の校長、アリウスだよろしく」
「校長先生……?」
随分若く見えるけど、アリウス校長はどう見ても20代くらいに見える好青年と言った感じの人だった。
校長先生とか聞くと、もっと年齢の高い人を想像するのだけど……
「さあ、次の会場はコチラだよ、毎年一番にこの試験を合格した子を僕が迎えに行くのが恒例になっていてね……」
「オレ達一番乗りだってさ~やったネ~」
「コレもデューイ様の機転と、僕の豪速球の賜物ですね……」
どうやら私達は、ココに一番乗りだったらしい。
アリウス校長の後について、深緑の森の中を歩き進んだ。
さっきの柱が入口だとすると、校舎までは結構あるように思うが、まるで蜃気楼みたいに佇んでいて進めば進むほど遠くなってる様な近くなっている様な不思議な感覚がした。
「もう、かれこれ100年いや、150年だったかな? 絶やす事無く続けてるんだ」
んっ──?
待って……今、150年って言った?
いやいや、何もず─っとアリウス校長が迎えに来てたワケじゃないもんね?
「私も随分とあの頃からしたら、歳をとったよ……」
いや、やっぱりこの人が150年以上やっているっぽい……
「私はエルフの一族の末裔でね、長命なのだよもうかれこれ300年はこの学校をやってるんだ」
「へ~……っ、そういや執事君も妖精族だよね」
「ええ、しかしエルフ族は閉ざされた谷の集落にいますから、僕もお会いしたのは初めてです」
そういえば、ルミエールの授業でこの世界には色々な種族がいて、寿命や見た目なんかも私達と全く違い、言葉や文化も様々な種類のモノがあると聞いた。
「さあ、着いたよ、ようこそセブンスフォース魔法士育成学校へ」
「ココが……本当の学校?」
大きな扉を前に、私は馬車から見えた普通の校舎の事を思い出す。