「はぁ~? 何それ呪文のつもり~?」
「えっ!? いや、何となく言ってみただけで……」
すると──
「結構でーす!」
明らかに扉の向こうから声がした。
私達は顔を見合わせ、すぐに扉を叩いて向こう側の人物に訴える。
「すいません! アノここを開けてもらえませんか!?」
「ねぇねぇ~! ちょっと開けてくんな~いっ!?」
「開けて頂けませんと、コチラを破壊する事になりますが……」
だが、それっきり全く扉から反応は無かった。
「もう一度さっきの言ってみたら~?」
「いや、それだと扉は開けてもらえないだろ、それで開くならもう開けてもらえている」
そもそも、何故さっきは返答があったんだ?
何となくこういう光景をアニメで観たから言ってみたけど……。
ノアのお兄さんは扉にノックをして開けた。
それは恐らく扉はノックして入る、というノアのお兄さんの中のルールがあったからなんじゃないだろうか?
ルール……つまり、お約束というヤツが……
お約束──
「ルミエール! 扉じゃなくアノ窓を割れ!」
「デューイ様?」
「はっ? 急に何言ってんだよ? キミ、散々執事君が扉を壊すの反対してたんじゃないの~?」
「壊すのは扉じゃない……窓だ!」
私は、玄関先に不自然に落ちていた、野球ボールを拾いあげルミエールに渡した。
「コレを思いっきり、窓に投げろ!」
「承知致しました」
ルミエールも私の気迫に、コレが冗談などではない事を悟った様だ。
野球などした事ないだろうに、めっちゃ美しいフォームで構えた後思いっきり窓に投げ込んだ。
パリ──ンッ!!
というガラスの割れる音がして、すかさず私は叫んだ。
「すいませーん! ボール取って下さ~いっ!」
ノアとルミエールはこの私の一連の行動が全く理解出来ず、首を傾げていた。
しかし──
この行動の答えは、すぐにでる事となったのだ。
「コラ──ッ!! 誰だウチの窓ガラスを割ったヤツは!?」
あれだけ力ずくで絶対に開かなかった扉は、すんなりと中から開き、頭頂部が太陽の恩恵受けし輝くおじさんが現れた。
「開いた…………」
「開きましたね」
私は二人の背中をドンと押した。
「すいません! 僕達がやりましたー!!」
押された拍子によろけたノアが、玄関に立つおじさんの方へ倒れ込むと、まるで最初からそこには何も無かった様に、二本の白い柱が立っているだけとなった。