僕……いや、私は立花 夏帆(たちばな かほ)18歳。
どこにでもいる日本の女子高生だった。

好きなモノはアニメと乙女ゲームと、あとは声優さんや2.5次元舞台。

趣味はコスプレ!

で、夏休み真っ盛りの8月のある日。

私はコスプレの衣装とウィッグを詰めた、デカいトランクを引きずりながら組み立てれば全長約2メートルほどになる、小道具の槍を長物用の袋に入れて始発電車に乗る為に駅に向かい歩いていた。

で、めっちゃよくアニメとかで観ていたアノ、信号無視してきた大型トラックに轢かれて異世界に転生した──

ではなく……

歩いていたら、持っていた長物に足が躓いてそのまま転んで前にあったコンクリートブロックに頭を強打。

で、気が付いたら私は大きなフカフカの天蓋の付いたベッドに寝ていた。

最初はもちろん夢だと思った。

鉄板ネタだが、頬をつねってみる。

痛い。
もっかいつねってみる。
やっぱ痛い。

私は一体どうしたのか、この場所が一体どこなのかわからない。

記憶を整理してみよう。

私は、夏のオタクの祭典・至上の楽園、コミックパラダイス(一日目・ジャンル女性向け)に行く為に重いカートを引きずっていた。

カートの中には大好きなゲーム、戦乱男子のキャラの衣装(着物と甲冑全て手作り)そしてメイク道具とカメラが入っていた。

手には武器のこちらも手作りの、前田KG・ジュニアの組み立て式槍(製作期間一ヶ月)を持ち、地元の駅に向かっていたはずだ。

だけど──
槍に足を取られて思わず前のめりになって、それで……
突然、目の前が真っ暗になってそれから……

どう思い出そうとしても、そこで私の記憶は途切れていた。

(もしかして、頭打った? 打ちどころが悪かったとか?)

額に触れてみる。
特に腫れてもいないし、手にべったりと血が付いたりする展開も無かった。

「ん……アレ……?」

ただ、ただ違和感があった。

私は黒髪ショートカットだ。

コレは何だ?

私の手に絡まる。長い金髪。

何コレ、ウィッグ?
引っ張ってみるが、頭皮の引っ張られる感覚しかしない。

「はっ? どういう事?」

私はベッドを降りると、部屋の中にあった大きな鏡に向かって歩いた。

というか、ココは一体どこなんだろう?
病院とか?

いやいや、こんなロココ調の病院って院長の趣味を疑うわ。

金色の装飾に縁どられた鏡、私は確かにそこに立った。

だけど──