先程散々引っ張っていたのに、ルミエールにはアノ磨りガラスで出来た、レトロな横開きの扉は見えていなかったのか……。

「お前がさっき引っ張っていたろ?」

「えっ? ああ……もしかしてあの鉄の処女(アイアン・メイデン)の事でしょうか?」

へーっ……この世界にも、中世で使われていたとされる拷問器具と同じモノがあるんだ。
そして、私がガラス戸に見えていたソレがルミエールにはそんな物騒なモノに見えていたワケだ。

なんで開けようとしたのっ!?

ともかく、そんな事よりも今はアノガラス扉を開けて中に入る事が先決だ。

私達は急いで、玄関のある方へと向かった。

「スゲー! なんだよ、こんな扉初めて見たわオレ!!」

興奮気味にノアがガラス戸を、色んな角度から見たり触れたりしていた。

玄関は先程と同じレトロなガラス製の扉、手を掛けて横に引っ張るタイプ。

私は、扉に手を掛けそのまま開けようと力を入れた。

が……

「ぜんぜんっ!! 開かないんだがっ!?」

しまいには足までかけ、ついにはルミエールとノアに引っ張ってもらう、童話の大きなかぶ状態で扉を引いた。

「なんっ、でっ……!! 開かないんだっ!!」

やはり、どれだけ力を入れてもこの扉は開かないみたいだ。

「デューイ様どうします? もういっそ面倒なので扉をぶっ壊しましょうか?」

「……ノア、君のお兄さんは普通に開けて入ったって言っていた?」

ルミエールはスルーして、私は再びノアに確認した。

「ん~っ……普通に入ったって言ってたけど……あっ!」

「どうした? 何か思い出したか?」

「確か、ノックしたって言っていた」

「ノック……」

つまり、何のアクションもせずには中には入れない、という事か?
扉ならノックする、それが入る為に必要な条件だったという事なのだろうか?

「では、この扉は破壊しましょうか?」

この執事は暴力でしか、解決出来ないんだろうか?

「ノックしてみよう」

私は扉の前に立ち、ゆっくりとノックを繰り返してみた。

だが──

一切、反応が無い。

「すいませーん」

声を掛けてもみた、何となくこういう扉だとノックよりもこういう方がしっくり来る。

シーン────

けれど、中からは何も反応は無い。
その前に、この中に本当に誰かいるんだろうか? 一切ヒトのいる気配もしないのだが……

「すいませーん! 新聞屋でーす」

最近こんな光景は見ないが、古き良き昭和を題材にしたアニメやドラマでよく観たシーンを思い出してつい、私の口からそんなセリフが出ていた。