「今のは……?」
──フッと、見えない幕を確かにくぐったような感じがした。
「んっ! よし、目ぇ開けていいよ~」
そう言って、ノアが目を開けルミエールも目を開く。
「コレは──!?」
二人とも大層目を見開いて、塀を見つめた。
本当にこんなんでちゃんと私と同じ様に、見えているんだろうか?
「コレはまた随分と……趣がありますね」
「ま、まぁ……質素つーか、簡素だねぇー」
二人は呆れた様に、呆然と目の前のソレを見つめた。
「お前ら……なんかバカにしてるのか?」
私は二人の方にジトっとした視線を向ける。
「いっ、いいからいいからっ!! ちょちょいっとこんな塀、飛び越えちゃおう~」
ノアはすかさず塀に手を掛け、よじ登ろうとした。
が、しかし──
「あっ、アレ?」
何故か足をジタバタと動かしているだけで、一向に向こう側へ行く事が出来ない。
「何をしてるんです? とうとう気でも狂いましたか?」
「ちっ、違っ!! なんか足が引っ掛かってコレ以上登れないんだよ」
「登れない?」
私は、ノアと同じ様に塀に手を掛け登ろうとした。
このくらいの高さなら、私にも軽く登れる。
目視では誰もがそう思える高さだ。
しかし──
「確かに、何かが邪魔して塀を登れなくしているみたいだ」
「ノア様、他に方法は何かご存知では?」
「……ねぇよっ! ウチの兄ちゃんが見えたのは壁や塀じゃなかったし……」
「壁や塀じゃない?」
塀から手を離すと、未だ塀に苦戦するノアに詰め寄る。
「どういう事だ? 障害は壁や塀だけじゃないのか?」
「えっ……!? ああっ、言ったろ越えられないモノを具現化してるって、壁や塀に例えるヤツもいれば違った障害に見えるヤツもいる……ウチの兄貴は扉だったって言ってた」
「扉……?」
「ああ、それで……普通にドアを開けて入ったって……」
「ドアを開けて入った? ドアを登ったんじゃなく?」
「そりゃあ、ドアは開けて入るだろ? 登らないだろ普通」
確かに、そうだ。
みんなが壁やら崖に見えているから、てっきり登らなきゃいけない様な気がしていたが……
恐らく、コレは見えたモノによって、向こう側に行く方法も当然違うという事なんじゃ無いだろうか?
「そうだっ! この反対側に扉がさっきあった」
「えっ!? じゃあ、もしかしてそこから入るのか?」
塀から勢い良くノアは飛び降りた。
「扉……そんなモノありましたか?」