ココにあるのは昔ながらの一軒家。
海の名前の家族が暮らすアニメの、まさにあんな感じの家の玄関が目の前にあったのだ。
曇りガラスで出来た横開きの扉、コレはもうアノ国民的長寿アニメの人達の家そのもの。
何故か、玄関の脇に野球のボールまで転がっている。
同時に、何故か少し懐かしい気までしてくる。
(そういえば昔、近所にこんな感じの家があったな──)
いや、そんな感傷に浸っている場合ではなかった。
「ね、ねぇ、コレが学校?」
私はルミエールに耳打ちした。
「歴史ある名門校といった雰囲気ですよね」
えっ? この一軒家が??
「見てください素晴らしいですよ、あの屋根の装飾」
瓦屋根は確かに最近じゃ珍しいけども……
「それにアノ、ガーゴイル」
屋根の上には白い猫が一匹。
アレはガーゴイルではなく、どう見てもタマだ。
「しかし、どこから入ればいいのやら……」
ルミエールは、いきなりガラスの引き戸を引っ張ったりしだした。
「えっ!? まっ、待って、ココ本当に学校なの!?人の家かもしれないのにそんな勝手に……」
「……デューイ様? やはり記憶だけでなく他にも脳に支障が?」
「失礼なっ! 僕は至って正気だ!!」
おかしいのはどう考えても、ルミエールの方だ。
こんな一軒家が学校とか、何かの間違いに決まっている。
いくらこっちの世界の人と価値観が違うとは言っても、どう見てもコレはただの家。
それに、もし誰か住んでいて勝手に玄関なんか開けたら不審者扱いされる可能性だってある。
そんな事を考えていたら、どこからか人の声が聞こえて来た。
「やはり、こっちは無理だ!」
「向こうの壁から入れないか!?」
何やら騒がしい声が、家の裏手の方から聞こえて来た。
「行ってみよう」
私達は急いで声のする方へと向かった。
そこで、少し不思議な事が起きた。
こんな一軒家の裏手なんて、せいぜい1、2分で回れるはずだ。
しかし、歩いても歩いても何故だか辿り着く事は中々出来ず、まるで随分大きな建物の外周をぐるりと回って来させられた気分だった。
「おいっ、やっぱりダメだ」
「クソっ! こっからじゃ入れないのかよ!」
辿り着いた場所は、木の塀に囲まれたこの家のちょうど裏側になる部分で、高さは私がジャンプをすれば中の様子がチラ見出来る程度のモノだ。
──で、何故かその塀に私達と同じ制服を来た人達が、みんな虫みたいに張り付いている。
「アレは、何をしてるんだと思う?」
「そうですね、壁と一体化しその気持ちになっている……とか?」
「なんで?」