「この顔が喜んでる様に見えるとか、空気読めないにもほどがあるが……どうせ何があっても着いて来るんだろ?」
ルミエールともこうしてすっかり、嫌味を言い合える仲になった。
というか、ハッキリ言っても全く動じないのでぶっちゃけそれすら億劫になって来ている。
「よくおわかりですね」
私は深く溜め息を吐く。
いつまでコイツとこんなやり取りを続けてかなきゃならないのか……
考えるとまた鬱になりそうだった。
「あっ、ほら見えて来ましたよ?」
そんな私とは対照的に、ルミエールの声は弾んでいた。
馬車の小窓からは深い森の高い木々が見え、その間から何やら大きな建物がチラチラと見え隠れしていた。
「アレが、セブンスフォース魔法士育成学校です」
「はっ?」
私は今、自分の目に映る学校の姿に絶句した。
いや、普通なら魔法士育成学校だとか、セブンスフォースとかいう何ともゲームの技名みたいな名前の学校はそれはもうお城みたいな、こんな建物日本だとどこぞのテーマパークくらいしかないんじゃないかと、あとはドイツ村辺りにはありそうな絢爛豪華な華美な建物がドーンと建っているのを想像していた。
───普通に、ホント普通の学校の校舎
だったのだ。
恐らくコンクリート製で、時計とかあって、色も無難なクリームで、だいたい鍵掛かってて実際には入れない屋上があるヤツ。
「えっ? 学校? えっ? 魔法士育成学校なのにしょぼくない?」
「はい?」
「だって、普通ならもっとお城みたいなのをさ想像してたから……」
「はい、やはり名門セブンスフォース……随分と立派な学校ですね」
「アレが……? 立派?」
ルミエールの感想に、私の頭の中は?でいっぱいになる。
いやもしかしたらこの世界では逆に、ああいう建物が立派とか素晴らしいのかもしれない。
もしくは、ルミエールの価値観が……
そんな事を考えていたら、いつの間にか馬車は止まっていた。
「着いたって事?」
「恐らく……」
御者のいない魔法の馬車は、目的地に到着すると止まる仕様になっているらしい。
学校の入口と思われる場所に止まり、私とルミエールは荷物を持って降り立った。
「…………コレ……は?」
しかし、学校の前だと思って降りたその場所はにはどう見てもポツンと不自然な建物が一つあるだけ……
何故だか普通の一軒家があるだけなのだ。
どう見ても学校ではない。
普通の家。
「荘厳な雰囲気ですね」
「荘厳……?」
向こうの世界とこっちの世界だと、もしや言葉の意味が違うのか?
今すぐ辞書が欲しくなる。