とおい昔に読んだ、お気に入りの漫画にこんな展開があった事を思い出した。
憧れの人を追いかけて、男子校に男装して入学するというものだ。
女性だという事を隠して、そんな生活を送る。
私だけじゃなく、こんな展開夢見た事ある女子は多いんじゃなかろうか?
きっかけは、本当にそんな些細な興味本意からだった。
まあ、せっかく異世界にいるんだし普段出来ない体験をしてみたいよね?
という、ちょっと娯楽的感覚があった事は否定出来ない。
とりあえず──
まずは名前を、ミーア・トランダルからデューイ・トランダルと改名した。
それから、長かった金髪をバッサリとショートに……何故だか切るのを、私ではなくルミエールが躊躇しそして泣いていた。
私的には自分で長い間伸ばしていた感覚も無かったし、元々がショートだったのでスッキリサッパリした~という開放感しかない。
学校の入学手続きは、父様が色々とやってくれて私──いや、僕は晴れてセブンスフォース魔法士育成学校に入学が決まった。
「デューイ様……」
で、今日は入学初日なのだけど……
「なんで、あんたがいんのよ……いや、いるんだ……ルミエール……」
「もちろん、僕もデューイ様と同じく魔法士育成学校に入学するからです……」
「えっ……いや、お前は魔法士になる必要ないだろ?」
揺れる馬車の中少しは気心の知れたルミエールと向き合って座りながらも、もうココからデューイという存在になろうと必死だった。
この世界に来てアレから三ヶ月──
もしかしたら、やっぱりコレは夢で元の世界に帰れるのではないかと少なからず期待はしていたのだが……
結果は虚しく、寝ても覚めても、私は『立花夏帆』には戻れなかった。
さすがにそれが三ヶ月も続けば、諦めも付いてくるし覚悟も出来てくる。
辛かった今日までの日々を思い返した。
朝から晩までルミエールに、勉強という名の調教をされ、あらゆる分野の知識を叩き込まれ血反吐を吐いた。
何度も挫けて挫折しそうになった、逃げ出そうかとも思った……
でも、コレが終わって入学すればこの鬼執事ともお別れ出来る! 本当にコイツとの地獄の特訓勉強プランAを選ばなくて良かったと……心底思って頑張ったのだ!
「お父様からも頼まれております、デューイを頼むと、入学証もこの通り……」
そう言って私とルミエール、二枚分の証書を顔の前にチラつかせた。
「ふふっ……どうしました? デューイ様?そんなに僕と一緒に行ける事が嬉しいのですか?」